圃場(ほじょう、=畑)マップとは、梨の樹の配置図です。1年以上前に作成してガンガン運用しています。使ってみると便利でもはや手放せないレベルなのですが、よその果樹農家ではあまり例がないらしいので、詳しめに紹介したいと思います。
圃場マップとは
梨の樹の配置図です。一本ずつIDを振って個体管理というのは、数十年単位の永年作物である果樹だからこその、なせる技です。単年作物である米や野菜なら、畑単位もしくは列単位くらいの管理が実務的な限界だと思います。
圃場マップ以前のよくある光景
マップを作る前、阿部梨園では以下のようなやり取りを何度も立ち聞きしました。
よくある光景その①
阿部: 今日どこまではかどった?
誰か: 奥からX列目のY本目ですからの、、、
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> X(またはY、または両方)が間違っている <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
よくある光景その②
阿部: あと何本くらい?
誰か: えーと、、、_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 畑で数え直さないとわからない <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
これ、樹の配置図、樹ごとのIDがあれば済むことなんじゃないかなぁと気付きましたが、なぜそれまで存在しなかったのかは今でもわかりません。。。
圃場マップがあるとできること
畑の情報を樹の単位で蓄積できるようになりました。情報に幅や奥行きができるのはもちろんのことですが、圃場マップのおかげで、正確に情報を伝える必要性が生まれて、現場のコミュニケーションが活発になったように思います。
- 作業記録/作業履歴
- 誰がいつどの樹に何の作業をしたかが記録できる
- -> 作業の引き継ぎに便利
- -> 作業の進行管理も精度が出る
- -> トレーサビリティ向上につながる
- -> 転じて、従業員の作業に対する責任感アップ!
- 樹の管理データベース
- 樹ごとにどんどん情報を蓄積する
- 樹勢、病虫害の記録、生産量、その他いろいろな特記事項、、、
- 同じ品種でも各々個性が違うはずなので、管理に反映させたい
作り方
はじめは白紙に、全くのフリーハンドで配置図を書いてきてもらったのですが、カオス過ぎて使えず(空間的にゆがみすぎて把握できない)、二度手間を要してしまいました。Google Mapが神です。
- Google Mapから圃場の航空写真をキャプチャ
- 圃場の外周をトレース
- キャプチャした航空写真に、樹の配置を手書きで書き込んでもらう
- 品種情報も捕捉する
- 航空写真に座標および目盛り軸を乗せる
- できるだけ実体に即した間隔で
- ->頑張って使いやすい地図に落としこむ
- 佐川は無難にAdobe Illustratorを使いました
- ここのプロセスが明らかに一番の難関なので、簡単なツールを誰か作って欲しい
もし、似たようなものを作ってみたい人がいれば、方眼紙に手書きから始めてみるのがいいかもしれません。それをどうやってデジタルにするの?っていうところは、デザインとかやってそうな知り合いに頼みましょう!
作って苦労したこと
- 毎年更新が必要
- 新しく植える樹もあれば、枯れる樹もある
- 多数品種が不規則で入り乱れている畑がある
- 行と行、列と列の間に、新しい列ができる
- 若木を密に植えて、後で間引いたりするために0.5列、0.5行が発生する
- ハリーポッターの「9と3/4番線」かよ!!っていうw
- ジョイント栽培の樹とかどうしよ、、、
- 等間隔から外れる樹がある
- 特に畑の外周
- 位置と座標がずれるものは、導線を引いて便宜的に対応
- 細部にどうしても歪みが生じる
- 測量したわけじゃないからしょうがないが、、、
- どこかはズレて不整合が発生してしまうので、補正に苦労した
まとめ
樹の管理も、最初は想像してもらうのにも苦労し、必要性が現場に浸透するまで時間もかかりました。それでも、使い慣れれば自分たちに合わせた新しい使い方のアイデアも出てきたり、管理作業のレベルを押し上げてくれた感があります。
本音は、枝ごとの管理、実ごとの管理ができれば理想ですが、これはさすがに毎年大幅に変わるので、現状では難しいです。