2017年の阿部梨園は、スタッフの「個の力」の底上げに注力する方針です。腰を据えて従業員教育に向き合うべく、まずは阿部梨園ライブラリ(文庫)を作って、教材を揃えました。
背景(これまで)
これまでの阿部梨園は寄せ集めメンバーでチームを作り、各々の良さをどれだけ引き出せるかに特化していました。中長期的な視点での雇用/採用ではなかったり、経営面で余裕がなかったので、教育コストを払えなかったという経緯があります。しかし最近になって、組織化をはかり継続雇用できるようになって、いくつかの問題が顕在化しました。
- 作業面、技術面の教育ばかりに傾倒してしまう
- 普遍的な社会人常識、スキルが身につかない
- 人格も含めた全人的な教育ができない
上記の結果、業務上でも指示/指導コストが上がっていました。
- 口頭で同じ指導を何度もすることになる
- 指示待ち状態が定着して、指示側の負担が増える
- 指導側の主観、経験、能力の制約を受ける
また前提条件として、以下のとおりです。
- 中心メンバーも、これまできちんとした社会教育を受けてきていない
- アルバイト感覚で入職しているので、プロ意識は高くない
- いわんや農業に対しての意識をや
- 自学自習で不足を補う習慣がないので、なかなか成長できない
せっかく毎日一緒に仕事をして、人生の一部を共有するのですから、「ここで働いてよかった!」と思ってもらいたいものです。各人の能力を伸ばしてこの先の人生を少し楽にすることが、雇用側が用意できる最大限の親心だと思います。
いいチームを作るには、待遇や条件を整え、採用に倍率をかけ、意識や能力の高いスタッフを揃えればいいかもしれません。しかし私たちは、現有戦力を大切にして、ポテンシャルを最大限まで引き出す努力で、同じような成果を得られるようチャレンジします。果たして、どこまでできるのでしょうか、、、?
手段(なぜ文庫なのか)
従業員教育にはいくつかの手段があります。
✕:外部研修
非日常感はいいと思いますが、ありきたりすぎるのと、一過性で終わりそうな感じなのと、コストをかけたくないのとで見送りました。
✕:自主教材
本当はこれが◎だと思います。自分たちで作るオーダーメイドの教材。いつかは取り組みたいですが、今はコスパ悪そうです。
○:一般書
低コスト。即導入可。これにします。ちなみに中古で買い揃えました。
目的
- スタッフがそれぞれ足りない知識を身につける
- スタッフが自学自習する習慣を身につける
- 共通のリソースから共通の知識を身につけ、業務上のコミュニケーションツールにする(大切)
実施方法
1. 佐川がまずは20冊強選びました
- 類書をたくさん読んだ佐川が選んだ本だから、各自が適当に買って読むより効率が良い、という発想です
- 簡単な本、イラストが多い本、読みやすい本を選びました(かっこいい本、難しい本を選びたいところですが)
- これからも増やしたり減らしたりしたいので、冊数にはこだわっていません
2. みんなで全部パラパラめくる立ち読み会を開催しました
- 置いておくだけだと読んでもらえないので、まずは触れてもらう意図です
3. その中から、みんなで話し合って、今の阿部梨園に必要な3冊を選びました
- これは超いいアイデアだったかなと。押し付けられるよりは、自分たちで選んだほうがいいです
- 全部必要だけど、すぐに全ては読めないので、順番を決めてもらいました
4. 各自に読んでもらう
- 上記の3冊を優先しつつ
- 業務ではないので強制ではありません。各自の意識に応じたペースで
- 勤務のスキマ時間の有効活用も
5. 簡単なレポートを書いてもらう
- 本人が内容を忘れないために
- レポートを書く練習
6. レポートを週次ミーティングで発表してもらう
- 感想戦
- 発表の練習
阿部梨園ライブラリ【23冊、’16/12/6時点】
A. 無人島で仕事するならこの1冊
世界一やさしい問題解決の授業
個人的殿堂入り。何十人に勧めて買わせたことか。。。問題解決の解決手段を絵本レベルでわかりやすく教えてくれます。類書はマッキンゼーの〜、BCGの〜みたいな本ばかりですが、問題解決はコンサルの専売特許ではありません。すべての人を助けてくれると思います。
B. ポピュラーではないけど、珠玉の3冊
あなたが上司から求められているシンプルな50のこと
20代の頃に上司はこういう意図で指導してくれていたんだなと思い返しながら、愛を感じ直す本。マネジメント側に回ると、「そーそー、言いたかったのはこういうこと!」の嵐です。押し付けがましくもなく、部下側の利益に立って書かれています。
文章力の基本
読みやすい、伝わりやすい文章、言葉づかいの実例集です。実際にどこをどう直すといいのか、一つひとつ例を挙げて説明しています。これほんと、すべての人にオススメ。アハ体験ばかりです。みんな、もっといい文章を書けますヨ。
ビジネスモデルの教科書
ビジネスモデルがよくわからない人向け。大手企業を例に、ビジネスモデルキャンバスを使ってわかりやすく説明しています。大局的な経営判断をするポジションではなかったとしても、利益の源泉、競争力の源泉を知っておくと合点がいくことも多いです。これより高レベルな類書は一気にお堅くなるので、この本くらいがちょうどいいです。
C. 新入社員向け
会社の教科書
アルバイトしかしたことがなかったり、親元就農してしまったり、「会社ってなんなの?」という問いを解消できないまま大人になってしまった人に超おすすめです。なんで会社はこういうシステムをとるんだろう、というところまで考えるようになると、学び取れることが増えます。半分マンガですw
ビジネスマナーの解剖図鑑
こちらもイラストばっかりですw マナー本はけっこう退屈なのですが、この本は少しウィットが効いているので、読み進めやすいです。
入社1年目の教科書
説明するのも恥ずかしい超メジャー本。ひと通り読んで、納得できることを取り入れましょう。
99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ
上に同じです。
もし僕がいま25歳なら、こんな50のやりたいことがある。
仕事術というよりは、生き方本。このバランス感覚を20代のうちに手に入れるのは極めて難しい、、、というか無理だからこそ読む価値があります。「暮しの手帖」元編集長、松浦弥太郎さんの著書。
D. 仕事術
ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
GTDといって、タスクを高速処理しまくる方法論が10年くらい前に流行りました。いまも学べることが多いです。仕事が遅い人にオススメ。
最少の時間と労力で最大の成果を出す 「仕組み」仕事術
仕事は精神論や記憶力に頼らず、どんどん仕組みにしてしまったほうがいいです。自分にあったルールで脳内メモリを解放しましょう。類書多数なので、似た本でもいいと思います。
仕事の9割は「段取り」で決まる!
段取り大事ということで。段取り本も多いので、他の本でもいいですが、一冊はマスターした方がいいです。
無印良品は、仕組みが9割
仕組みや段取りを、組織や事業、会社全体で共有するための本です。マニュアルをいかに磨き上げて、弾力的に運用するか、に尽きます。マニュアル化にありがちな硬直化をどのように防ぐかもよくまとめられています。少人数チームこそ、一読の価値ありです。
トヨタの片付け
5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ))は製造業の基本です。5Sは宗教活動ではなく、実際に生産性を高め、競争力を強化してくれるものです。片付けのノウハウだけでなく、意味や効用も掘り下げています。チーム全体で共有したい内容です。
E. マネジメント
無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論
タイトルからは並々ならぬ怨念が感じられますが、中身はシンプルでわかりやすい本です。成功談や精神論を押しまくる経営本、マネジメント本の多い昨今ですが、体系だった理論を学ぶほうが先決です。本書は入門書としてベストだと思います。上司や社長の意図を裏読みしたい従業員にもオススメ。
図解 チームリーダーの教科書
イラスト半分、カジュアルなリーダー本です。管理職というよりは、後輩が入ってきた若手平社員や、主任クラスにおすすめです。というか、サークル幹部やバイトリーダーくらいがストライクゾーンかもしれませんw
F. 農業
小さくて強い農業をつくる
自分で考える農業。の先駆者、久松さんの著書。業界に入った頃の新刊だったので、普段の作業一つから意味を問い直せば価値が生まれるんだなぁと感銘を受けました。哲学がある方から学べることは多いです。農業(ビジネス)本はこれ1冊で十分、ということになりました。
G. ビジネス
一冊で丸わかり ドラッカー・ポーター・コトラー入門
様々なビジネス書はドラッカー・ポーター・コトラーの言っていることの焼き直しが多いので、まずは基本に当たりましょう。原著は読みにくいという人向けに簡単なまとめ本をチョイスしました。このワードは見たことある、この考え方は知ってる、っていう状態になっておくことが大切です。
良い値決め 悪い値決め
商売をしているすべての人にとって、値決めは永遠の難問です。お客様とのよい価値交換を続けられれば持続的なビジネスといえるのですが、大手企業でさえ値上げや値下げに腐心し、ときには失敗もします。値引き、割引き、ポイント、キャンペーンなど、色んな工夫(=カラクリ)も取り上げています。価格に自信がない人ほどおすすめです。
スタバではグランデを買え!―価格と生活の経済学
マーケティング、という言葉だけで蕁麻疹が出ちゃう人向け。キャッチーなタイトルですが、売れただけあって超わかりやすいです。ふつーにオススメ。
100円のコーラを1000円で売る方法
上に同じです。
H. コミュニケーション
伝える力
池上さんの本。新書なので網羅的ではありませんが、伝える姿勢を学ぶには軽くていいと思います。
理科系の作文技術
理科系のレポート、論文、発表資料を作る上ではバイブルのような本です。一応選びましたが、うちのスタッフにはまだ難しいような気がするので、もっとカジュアルな本を探します。分野が理系かどうかにかかわらず、構造的な文章作り、表現方式は普遍的に役立ちます。
むすび
阿部梨園は勉強も取り入れて、もう一歩成長したいと思います。面白そうだと思える本があれば、書店で探してみてください。ブックオフでも図書館でもいいと思います。また、おすすめがあれば教えてください(切実)!!